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廃墟に住んだ話

前回(全壊)の続き。

前回の話はこちら

たたみます。





前回書いた家賃697円で住んでいた社宅が水没し
取り壊されることになったので半年で
通称廃墟の別の社宅に引っ越しを余儀なくされた話の続き。






時は少し遡り水没の日、大型台風の接近により
昼過ぎから会社が浸水し始めたものの、
僕は遅番で最後まで残らないといけない勤務だったので
定時で帰る人たちを見送っていた。


そんな中隣に住んでいた先輩が

「プラン、俺は先に帰るからな!バハハーイ!」(原文ママ)

と先輩なのにお前はここで水没しろと言わんばかりの
最高の笑顔で僕を残し帰っていった。
あれ以上の笑顔は僕は未だ見たことがない。









夕方になり夜になり雨風は増し
近くの川の堤防が決壊し浸水、水没した。

結果、僕の車は高台に避難し無事だったが
先輩の車はボロ社宅が低い土地にあったのが災いして
車に乗って逃げようとしたら一気に水がエンジンまで浸水し廃車になった。
毎朝大塚愛のさくらんぼを爆音でかけているバチが当たったと思った。












住むところがなくなったので引越しをしなければならなくなったのだが
引っ越し先は簡単に言うと
たどり着くまでに狭いという言葉では現わせないほどの狭い路地を通り
たどり着いた先にはぎりぎりの駐車スペースしかないツタの生い茂った廃墟に
2mはあろうかという雑草に囲まれた社宅。



当時僕はちょっと大きめの四駆に乗っていたので
数センチ単位の切り返しを何回したかわからないほどの
精密な運転でなんとか社宅に乗り込んだ。
ギリギリでいつも生きていたいから。









会社から鍵をもらい足を踏み入れるのは
初めて案内してもらったとき当時の上司をもってして
「ここはないな」
と内見までもたどりつかず却下された物件。








初めて玄関までたどり着いた。
玄関は成人男性が少し力を入れて蹴れば蹴破れそうな仕上がりだった。
ドアの下5分の1くらいに大きく穴が空いているようにも見える。
防犯性0、仮にセコムを入れたとしても多分なんの意味もない。

しかし僕が泥棒だったとしたらまさかここに人が住んでいるとは、
金目のものがここにあるとは夢にも思わないので
ある意味天然のセキュリティー対策がとられていた。
なんたる逆転の発想。














ガンジーのような精神を持った玄関を抜け
中に入ると前の社宅と同様にすごく広かった。
間取りは前の社宅と似ていて8畳ほどの和室が2部屋にキッチン、
更にもう一つ和室があった。
やはり無駄に部屋が多くて広い。







ただこのもう一つの和室が曲者で
前と違い2畳ほどしかなく窓がないので見た瞬間

「独房」

この2文字が浮かんだ。
障子を閉めるとものすごい密閉空間になり
3日もいれば気が狂うと思った。
ここに足を踏み入れると精神に異常をきたしそうだったので
後日ここは冷蔵庫置き場にすることにした。
この部屋は部屋ではなくあくまで押し入れ。
そう思うことにし僕の記憶から消し去られた。








しかしこの社宅はなんと、驚くべきことにお風呂がちゃんと家の中にあったのです。
前の社宅はお風呂がガチ外にあり脱衣所がなかったので
裸になったまま一旦外を通って入浴しないといけないという
ありえないスタイルをとっていたので

「お風呂が家の中にある」

この一点だけでこんなことがあっていいのかという
感動すら覚えるポイントになっていた。



いや、このお風呂も厳密に言うと外なのだが。
後付けでむりやりお風呂をつけたっぽく
庭に出る掃き出し窓を開けて外に出てお風呂に行く。
ただし、そこに行くまでになんと囲いがあり周りからは見えないのだ。
ほぼ外。
そんなイメージ。





「裸で外を通ることをしなくてもいい」

これは本当に大きかった。
気温は完全に外の気温と同じなので
冬は豪雪地かつマイナス気温の土地柄でその中を
素っ裸で歩くというのはどう考えてもいい環境とは言えないはずなのに
外を裸で歩かなくていいなんてすごい!とこのときは本気で思っていた。



ここまでくると家に求めるありがたさのハードルというものが
完全に地を這っていた。
もはや何がよくて何がいいのか全くわかっておらず
思考能力は奪われていた。
このときの僕なら豚がわらで作った家でも喜んで住みそうだった。



このお風呂の難点は部屋とお風呂を結ぶ囲いの上部に
蜂が巣を作っていたということと湯船が尋常じゃなく簡素な作りで
足をかけて湯船に入ろうとすると手前に湯船が倒れてきて
お湯が全部流れてしまうという2点だけだった。

この蜂達は何度退治しても蜂にはないはずの
帰巣本能があるのかというくらい本当に何度も戻ってきた。
裸で頭上に蜂がいる恐怖というのはなにものにもかえがたかったが
その内慣れてコツをつかんだので素早くお風呂に入れるようになった。













前の社宅水没後、一旦実家に帰って(100km先)
ここに来た初日、実家から持ってきたのはなぜか片手鍋と敷き布団のみだった。
とりあえず和室の真ん中に布団を敷いて寝た。
だだっ広い部屋に鍋だけ置き、寝た。



翌朝。
頭が割れるように痛い。
僕は体は丈夫な方で風邪を引いたり熱が出ることはほとんどなかった。
理由は全くわからず環境が変わったからなのかな?と思っていたが
数日後理由が判明する。





























上司「あの家傾いてるよ」

えっ?
言っている意味がわからなかった。
確かにこの家は傾奇いてはいるかもしれない出来だ。
しかし傾いているとは一体どういうことだろうか。
家が傾いてるなんて新築だったら裁判ものだし一発で瑕疵物件入りだ。
それをそんな今日の晩ごはんはとんかつ、みたいな軽いタッチで
言ってくるもんじゃない。







帰ってパチンコの玉を床に落としてみた。
ものすごい勢いで部屋の隅に向かって転がっていった。
万有引力の法則。
ニュートンはリンゴで万有引力を発見しプランは社宅の傾きで万有引力を実感する。
ありがとうニュートン。



どうやら頭が痛くなった原因は傾いている下の方に向かって布団を敷き
頭を下に向けて寝ていたので
頭に血がのぼっていっていたのだと思う。






確かに屈強な男が数人で押せば倒れそうな家だとは思っていたが
まさか傾いているとは夢にも思わなかった。

検証の結果、この家は一方向に向かって傾いているのではなく
部屋の真ん中がせりあがっており全方向に向かって傾いているようだった。
先輩が遊びに来たとき空き缶を延々部屋の隅に向かって転がし
嬉しそうに転がる転がる(笑)と言っていた。
殴りたかった。









数ヶ月間さすがに傾いている家は厳しいと部長に訴え
さらにその上の上司が現地を見に来ることになった。


台風で水没した当日、泥の後片付けをしている家に
営業をかけてこいとむちゃくちゃなことを言う
近隣でも鬼と評判のその上司は入るなり

「おぉー広いなぁ~!いいなぁ!一人暮らしにはもったいないな!」

「設備も揃ってるしこれは不自由ないな!いいじゃないかここは!」

と傾きや家の周りに群生する2mの雑草、
風呂が(ほぼ)外にあることや蜂の巣などには一切触れず
いいところだけを見て「がっはっは大丈夫!」と言い残して去っていった。
人は自分に関係ないとここまで無責任になれるのかと学んだ。

















ある朝台所の水道で顔を洗おうとしたら突然目の前が真っ暗になった。
何が起こったのかわからず本気で世界が滅びたのかと思った。
水道の蛇口が根元から吹っ飛び水が吹き上げてきたのだ。
こんなことがあるのだろうか。
にわかに信じられなかったが漫画で見るような
リアルなしりもちをつき数分放心状態になった。











引っ越したのでインターネット回線を引きなおさねばならなくなった。
どこだったか忘れたがプロバイダーに連絡し住所や連絡先を伝え
相手の手続きを待っていたとき電話がかかってきた。

「プラン様・・・おうちが見当たらないのですが・・・」

??
意味がわからない。
内容を聞くと相手は地図でこちらの場所を見ているらしく
僕の伝えた住所ではそこが見当たらないという。
確かに少し中に入ったところにあるのでわかりにくいところがあるので丁寧に説明する。
口頭で伝えつつ細かくすり合わせをし、
向こうの言っている場所、僕の言っている場所は完全に一致した。
はずだった。

「いえ、そこには何もありませんが・・・」

そんなはずはない。
実際僕は住んでいるし市役所に住民票もある。




向かいのずっとこの土地に住んでいる齢80は越えているであろう
志村けんを50年くらい年を取らせた感じのくそじじいも
「この建物はいつからあるか記憶にない」
とボケてないことだけを祈る発言をしている。
ずっとあるはずなのだ。



相手の地図の発行年度を聞くと新しい地図だった。
何度説明しても見当たらないという。

いや、ないと言われてもこっちは住んでいるし
この住所で回線を引いてほしいと言っても
確認がとれないとできませんの一点張り。




なんなんだこの家は。
違う時空に存在してるんじゃないだろうな。
存在すら認知されていないのか?
この家本当にあるのか?
結局インターネット回線は引けなかった。

















この家は傾いているし春は花粉、夏は雑草秋は虫、冬は雪かきと
四季折々の地獄が襲ってきた。
めちゃくちゃな家だったがその分思い出も多くできた。

2年ほど暮らし、僕が諸事情でこの社宅を出なければならなくなり無人になった後、
上の判断でさすがにこれ以上ここに新人を住まわせるのはどうか、という議論になったらしく
今までの俺って一体・・・と思いながらも
取り壊しが決まり、今はもうない。


引っ越しする最後の日、
もう誰も住んでいない隣の家の玄関にぶら下がっているポストをのぞいたら
僕宛ての宅急便の不在通知が20通くらい入っていた。
そういえば頼んだのに届かない荷物がたくさんあるのをふと思い出した。










追記
昨日書きあがったんです。これ。
そして昨晩ニュースを見て気づいたのですが、
この社宅沈んだの、13年前の今日なんです。
そして今、超大型台風きてますね。


終わり。
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この記事へのコメント

- - 2017年10月23日 02:02:06

続きを待ってました(笑)
いつか戻ってくることを信じています。

- びや - 2017年10月24日 16:29:00

か 開拓はしなかったのですねε-(´∀`; )
其処からドラクエ10したんじゃなかったのか…

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Author:プラン
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柿の種を見ただけでどんな味か当てることができる。
レジでどこが一番早いか一瞬で察知できる。

グレン草原エリア5946丁目6番地


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レベルも高くもければ低くもない
所持金も多くもないがかといって
全くないわけではないミスター中途半端。

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